前髪
BiSHのセントチヒロチッチさんが好きすぎて、髪色は真似出来そうになかったから、前髪を切ってみた。
数十分後。
鏡の前にはオン眉の若作りBBAが映っていた。
わかってたさ。
前髪を切ろうと、例え髪色を真似たところで、わたしはチッチちゃんにはなれっこないって。
わたしがどんなにダイエットに励もうと、菜々緒さんのようなスタイルは手に入らないし、どんなにメイクを頑張ったって白石麻衣ちゃんの顔面にはなれない。どんなに言葉遣いに気を使っても中谷美紀さんのような気品は溢れないし、どうやっても石田ゆり子さんのようなチャーミングで可愛らしい大人にもなれないし、かと言って天海祐希さんみたいなバリバリのキャリアウーマンにだってなれないんだ。
どんなにがんばっても、コジコジにはなれないように(注:わたしの最終目標はコジコジになることである)。
そう。コジコジが言ってたではないか。
と。
わたしはわたし以外の何者にもなれないのだ。こんな人になりたいと憧れや憧憬はあっても、ないものねだりをしたところで意味なんてないし、自分にとっても良くないのだ。
わたしはわたしらしく、わたし以外の何者でもない、わたしとして生きていくしかないのだ。今日も。明日も。これから先の未来も。
でも、短く切りすぎた前髪は周りに意外と好評で、「雰囲気が明るくなった」だの「少しはメンヘラっぽくないイメージに見える」だの褒めてるんだかなんなんだかわからない言葉をくれるから、それが少しだけ嬉しく思うのだった。